公益財団法人 本間美術館は、「公益」の精神を今に伝え、近世の古美術から現代美術、別荘「清遠閣」の緻密な木造建築の美、「鶴舞園」、さらには北前船の残した湊町酒田の歴史まで楽しめる芸術・自然・歴史の融合した別天地。

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Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

コラム

公益財団法人 本間美術館 [山形県 酒田市] > コラム > 2019年 > 3月 > 22日

本間美術館を陰で支えた、本間紀男氏を顕彰する特別展

学芸員:阿部 誠司

  

 

仏像の研究・制作・修復を行う佛教造形研究所を創立し、常に第一線で活躍し続けてきた本間紀男(ほんま としお)氏が、平成27年3月に83歳で逝去されました。

 光恩寺の仏像を制作する本間紀男氏

 

本間美術館の理事を務めた紀男氏は、初代館長・本間順治氏のご子息でもあり、
東京で多忙な生活を送りながらも、常に本間美術館を想い、支えて下さいました。

晩年には、自身が研究の過程で蒐集した東洋美術のコレクションを
「蒼山(そうざん)コレクション」として、本間美術館に寄贈して頂きました。

私が紀男氏にお会いしたのは6年くらい前で、
小柄な体格に丸太のような太い腕と大きな手が強く印象に残っています。
お話の一つひとつが実体験にもとづく貴重なことばかりで、短い時間でしたがとても刺激的でした。

 

 

本間美術館では、紀男氏のコレクションを紹介する展覧会を開催してきましたが、
この度、長年にわたり館を陰で支えて下さった本間紀男氏を顕彰する特別展を開催することとなりました。

東京藝術大学の彫刻科を修了した紀男氏は、20代の頃から彫刻家として主に木彫・彫塑・ブロンズでの制作を手掛けており、新制作展やグループ展、個展などで作品を発表しています。

  

また、藝大在職中に学生たちと滋賀県信楽に行くようになったことを機に、
信楽の土に魅せられて、30年近く信楽焼の壺をつくり続けました。
それはまるで、土を捏ね積み重ね形を整えながら、心の対話をしているようだったと言います。

  

 

 

特別展では、信楽焼の壺 約25点を中心に、ブロンズ像4点、テラコッタ像12点、デッサン5点、
仏像研究や仏像制作の仕事などを紹介する写真パネルを展示し、
紀男氏が創り遺した象(かたち)をご紹介します。
紀男氏の心がかたちとなった作品の数々をご堪能頂ければ幸いです。

併せて、紀男氏が蒐集し本間美術館へ寄贈して下さった「蒼山コレクション」から、
仏像や陶磁器などの東洋美術もお楽しみ下さい。

 

 

■本間紀男(ほんまとしお) 工学博士・彫刻家・仏像彫刻研究家

略歴

1932年2月  東京生まれ
1956年   東京藝術大学美術学部彫刻科卒  同専攻科(現大学院)修了 副手、講師
1976年~  同大学大学院保存技術講座設立に際し、助教授として草創期の基盤固めを行う
1984年   工学博士号取得 東京工業大学
1986年   佛教造形研究所設立。修復及び伝統技法の研究に従事する
2002年~  本間美術館理事
2015年   逝去(享年83歳)

 

 

■研究活動

1982年在外研究員としてアメリカにて研修し、主としてボストン美術館、メトロポリタン美術館の仏像調査研究を行う。研究テーマは「在米仏像彫刻の技法材質の研究」。1970~85年に亘りインド、パキスタン、中国、モンゴル、韓国を度々訪問し、佛教遺品の調査を行う。
東京藝術大学に在籍中、文化庁より科学研究費を受け、20数年をかけて天平時代の全木心乾漆像(国宝・重文)のX線調査及び解析を行い、天平彫刻の実体を明らかにした。2001~04年、中世史の宝庫である群馬県新田庄尾島町の仏像悉皆調査を行い、多大な成果を得る。(町教育委員会より報告書出版)

1968~96年、新制作協会彫刻部会員。新作家賞を2度受賞。日本美術史学会、古文化財学会、保存修復学会、日本漆工史学会会員。

 

 

■主たる著書及び報告書

『聖林寺十面観音立像の構造・技法・材質の研究』(東京藝術大学紀要12号他 紀要執筆多数)
『敦煌塑造の研究』(MUSEUM 351)
『X線による木心乾漆像の研究』(文部省出版助成金/美術出版社1988年)
『天平彫刻の技法』(文部省出版助成金/雄山閣1998年)
『益子西明寺に伝わる木彫群』解体と復元の記録(栃木県教育委員会2001年)
『新田庄尾島町の仏像』悉皆調査報告書(群馬県新田庄尾島町教育委員会2004年)
『木彫仏の実像と変遷』(大河書房2013年)
『木彫仏の生涯 -誕生から終焉-』(公益財団法人日本彫刻会アートライブラリー№16 2015年)

 

 

 

2019.03.22