コラム

形式化以前、過渡的様相を示す「光明本尊」
学芸員:阿部 誠司
開催中の展覧会「祈りの芸術」より、酒田・浄福寺に伝わる≪光明本尊≫(鎌倉時代)をご紹介します。
「光明本尊」とは…
本尊様式の一つで名号を本尊とした「名号本尊」の一種。中央の名号から放射状に光明が放たれていることにゆらいします。
インド・中国における浄土教祖師群と和朝(日本)の浄土教先徳群を配することで、親鸞(しんらん)の説く真宗念仏が三国伝来であることを一画面で表しています。
鎌倉時代に制作。形式化以前の様相を示す
浄福寺の光明本尊には、阿弥陀如来の三名号『南无不可思議光佛(なむふかしぎこうぶつ)』『帰命盡十方无碍光如来(きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)』『南無阿弥陀佛(なむあみだぶつ)』と、阿弥陀(画面左下)・釈迦(画面右下)の二仏が配されています。
名号の周囲に配される祖師・先徳群は一定の様式があり、時代が経つにつれ形式化されます。
向かって左にインドと中国の浄土教祖師群を、右に日本の先徳群を配す
浄福寺の光明本尊では配し方に特異性があり、中央の名号の向かって左に浄土教における日本の先徳群、
上から「源信(げんしん)」「源空(げんくう)(法然(ほうねん))」「三菩薩」「太子と随臣」が、
向かって右には中国浄土教祖師群、「曇鸞(どんらん)」「道綽(どうしゃく)」「善導(ぜんどう)」が描かれています。
始祖・先徳群の数が通常よりも少なく、これは、親鸞撰述の高僧和賛が「三国七高僧」に由来すると思われます。
制作年代からも光明本尊の図が形式化する以前の解釈があったと考えられる、過渡的様相を示す貴重な本尊です。
浄福寺旧蔵の不動明画像も展示中
また、浄福寺は本間家の菩提寺でもあり、本展には浄福寺から本間家に伝わった≪不動明王三大童子五部使者像≫(鎌倉時代前期/館蔵/山形県指定文化財)も展示しております。
本図も、不動明王図の古式を伝える貴重なものです。
滋賀県・園城寺(おんじょうじ)の不動明王画像と同じ図様であり、智証大師(ちしょうだいし)が持ち帰った図像を忠実に写して制作されています。
2016.07.14
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