芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

公益財団法人 本間美術館Hommna Museum of Art

コラム

酒田・妙法寺の大涅槃図

学芸員:阿部 誠司

開催中の展覧会「祈りの芸術」より、酒田・妙法寺に伝わる≪釈迦涅槃図≫をご紹介します。

 

妙法寺 釈迦涅槃図  釈迦涅槃図 寛文八年(1668)

沙羅双樹(さらそうじゅ)の林の中で、頭を北に顔を西(極楽浄土の方向)に向けて横たわる釈迦を中心に、菩薩や仏弟子、会衆や動物までが釈迦を取り囲み、嘆き悲しむ情景を描いています。
江戸時代前期に描かれたこの涅槃図では、釈迦まだ眼を閉じておらず、最期の説法をしているようにも見えます。

涅槃図は釈迦の死という悲しみの中に仏画としての荘厳さが求められ、命の終焉を描くと共に、教えの永劫性を表現しています。
古くから描かれ続けてきた主要な仏教画題の一つで、命日である二月十五日の前後に釈迦入滅を悼み行われる「涅槃会」の際に掛けられます。

 

 

では、涅槃図を読み解いていきましょう。

 

8本の沙羅双樹

妙法寺 釈迦涅槃図 - コピー

釈迦が涅槃の為に8本の沙羅双樹の中を選んだのは、沙羅双樹にて仏の自在神力を示すためです。
8本の沙羅双樹の内、4本は説法が終わるとたちまちに 枯れ、他の4本は青々と栄えました。
これを「四枯四栄」と言い、肉体は涅槃に入ろうとも、説いた仏法は後世に残り栄えることを表しています。
中心には大きな満月が描かれています。

 

駆けつける麻耶夫人(まやふじん)

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画面右上には、釈迦の母・麻耶夫人(釈迦を産んで七日で亡くなる)が、天上界より駆けつける様子が描かれています。

 

届かなかった薬袋

釈迦涅槃図

釈迦の枕元の木に赤い袋が引っかかっています。これは、麻耶夫人投じた起死回生の薬が入った薬袋です。
しかし、釈迦に届くことなく、木に引っかかってしまっています。
この薬袋をネズミが取りに行こうとしたら、猫に邪魔をされた…という説も存在します。

 

釈迦臨終のきっかけに? 苦しむ純陀(じゅんだ)の姿

DSC04167 - コピー (2)

釈迦の足元で、手で顔を覆い泣き崩れる人物が純陀です。
一説では、釈迦は純陀から受けた食事にあたり亡くなったと言われています。
容態が悪化するお釈迦を見た弟子たちからは、純陀の食事を受けるべきではなかったという声が聞かれます。
しかし、釈迦は「私は純陀の食事によって寿命を迎えることができた。臨終の前に食事を捧げることは最も尊い行いなのだ」と諭しました。

 

また、純陀の右隣にいる人物はアヌルダ尊者と言い、ただ一人、釈迦の死の意味を理解し葬儀を取り仕切ったとされます。
そして、アヌルダ尊者は、天界から来る麻耶夫人を先導するアナリツ尊者と同一人物とも言われます。
アナリツ尊者は釈迦十大弟子の一人で、不眠で修行し失明したが、智慧の眼を開きました。

気を失いアヌルダ尊者に介抱される人物は、釈迦十大弟子の一人、アナン尊者です。
弟子の中で最も多くの教えを聞いたとされ、涅槃図では画中で最も美男子に描かれることが多いようです。

 

 

DSC04167  DSC04168

釈迦の周りには菩薩や護法善神、動物から霊獣までもが皆悲しみに暮れています。

その中に私たちの良く知るあの動物が描かれていません。何だか分かりますか?
ヒントは「薬袋」…です。

 

 

2016.07.17


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