芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

公益財団法人 本間美術館Hommna Museum of Art

コラム

大般若経を守護する十六善神

学芸員:阿部 誠司

開催中の展覧会「祈りの芸術」より、酒田・泉流寺に伝わる≪釈迦三尊十六善神≫をご紹介します。

 

泉流寺 釈迦三尊十六善神  釈迦三尊十六善神 江戸時代前期

まず、画面中央に金色の釈迦如来像。その左右には白象に乗った普賢菩薩と獅子に乗った文殊菩薩とが付き従っています。この三尊で「釈迦三尊」となります。
また、普賢菩薩の下の僧形の菩薩が法涌菩薩(ほうゆうぼさつ)、文殊菩薩の下の合掌する菩薩が常啼菩薩(じょうたいぼさつ)です。

 

 

十六善神とは…

釈迦三尊を取り巻くように、大般若経を守護する護法神・十六善神が左右に居並んでいます。
姿かたちは醜怪な夜叉や鬼神ですが、佛の教えを聴いて改心し、善心をおこして三宝に帰依(仏教徒になる)することで善神となりました。

 

 

三蔵法師と深沙大将

十六善神がうまれるきっかけとも言える物語を表すのが、画面右下にいる玄奘三蔵(げんじょうさんぞう=三蔵法師)と左下にいる深沙大将(じんじゃだいしょう)です。

泉流寺   泉流寺 釈

三蔵法師は唐時代(7世紀)西域を旅して、唐の都・長安に大部の経典をもたらしており、経典を入れた笈を背負う姿で描かれています。
また、深沙大将は三蔵法師の旅の途中に現れた鬼神で、胸に髑髏の瓔珞を付け、腹部に小児の顔のある姿をしています。

 

「因縁集」という書物によると、玄奘三蔵は17年間をかけて唐からインドへ渡り、大般若経などの経典357部をたずさえて帰国しました。その途中、川のほとりで遭った鬼神が深沙大将です。

帰路を急ぐ法師の前に現れた深沙大将は、『これまで法師の旅を邪魔してきたが、今こうして沢山の経典をたずさえた法師を見て仏法に寄せる情熱を理解し、これまでの行いを後悔している』と懺悔しました。
すると法師は、『今の懺悔によって、あなたが犯した罪はすべて消滅した。これから先は、あなたの家来とともに仏法を広めて、衆生済度に精進しなさい』と言い、大般若経を取り出して深沙大将の頭上にかざします。
深沙大将は、『これからは般若経を身をもって防ぎ守ります。また、般若を敬い信じる人に対しては、現在から未来にいたるまで、いついかなる場合もその願いが叶うよう援護するでありましょう』と法師に固く誓約しました。

 

こうして誕生した十六の善神たち。
姿は恐ろしく威圧的ですが、仏法とそれを信じる人たちを護るありがたい仏さまです。

 

2016.07.20


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