芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

公益財団法人 本間美術館Hommna Museum of Art

コラム

野田弘志、写実を極めたリアリズムの世界

学芸員:阿部 誠司

開催中の展覧会「野田弘志と堀内規次 -写実と幻想の世界-」より、野田弘志氏の展示作品をご紹介します。

 

野田弘志氏の略歴

洋画家 野田弘志氏は、現代日本の写実画壇を代表する画家の一人。
西欧の古典絵画に学んだ徹底的な細密描写によって国内外から高い評価を得ており、
現在も第一線で活躍しています。

1936年 韓国全羅南道に生まれる。
1945年 日本に帰国し、広島県福山市で過ごす。
1960年 白日会第36会展に初入選し、白日賞受賞
1961年 白日会第37会展においてプルーヴー賞受賞、白日会準会員となる。
     東京藝術大学の小磯良平研究室を卒業。
1970年 安井賞展、国際形象展、新鋭選抜展、明日への具象展、日本秀作美術展などに出品する他、
     個展を中心に作品を発表。
1982年 白日会第58回展で内閣総理大臣賞を受賞。
1990 年 ベルギーで個展を開催。
1992年 安田火災東郷青児美術館大賞を受賞。
1994年 第12回宮本三郎記念賞を受賞。ベルギーで個展を開催。
2008年 本間美術館で「野田弘志展」を開催。
2015年 神戸市立小磯記念美術館で
     「東京藝術大学・小磯教室に学んだ美術家たち2 野田弘志展 ―凍結する時―」を開催

 

展示作品の紹介

制作年の早い作品から順に展示しています。

  

手触りや香り、重さなど、対象の存在そのものを写し取るような静物画。

 

 『TOKIJIKU(非時)』のシリーズ

大画面に描かれた骨や木箱、羽、蜂巣など。
究極の写実で描かれた存在と、その配置や空間によって、野田氏の創造するリアリズムの世界がそこにあります。
タイトルも印象的で、コンセプトや作家の哲学的思考を考えさせられます。

  

第一印象が「写真の様だ」という声が多いですが、
よく見ると画面はフラットではなく筆跡や絵の具の凹凸が分かります。
野田氏の制作の様子が伝わるようで、人の手で描かれた絵画としてのリアリティも生々しく感じられます。

 

 『THE』のシリーズ

人体を描いた『THE』のシリーズは、そのタイトからしても存在を主題にしていることが伺われ、
野田氏の大切にする「生と死」という概念の中の様々な「生」のかたちを想像させます。

『THE』のシリーズと『TOKIJIKU(非時)』のシリーズを見比べると、
『TOKIJIKU(非時)』には「死」の気配が感じられます。
しかし、どちらのシリーズも「生」と「死」の両方を表裏一体で含んいるようで、眼には見えない現実をリアリズムの絵画で私たちに問うているようです。

  

存在することの意味を美と追求する野田氏の厳しい視線を感じます。

 

 

会場の最後には、鉛筆画を展示しています。
小さい画面に綿密な描写で繊細な光を捉えた作品は、野田氏のデッサン力の高さを物語っています。

  

 

 

7月15日(土)には、野田弘志氏による講演会を開催します。
作品の解釈は観る側それぞれにあって然るべきですが、
作家本人からコンセプトや哲学などをお話して頂けるのは、とても貴重な機会です。
ただそっくりに描くのではない、本当の「リアリズム」とは何なのか。
この機会に、大いに勉強しましょう。

 

2017.07.12


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