芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

公益財団法人 本間美術館Hommna Museum of Art

コラム

屏風の豆知識

学芸員:須藤 崇

開催中の企画展「大画面で楽しむ日本の美 屏風絵の世界」では、日本の伝統的な絵画表現の一つである「屏風」に焦点を当てて、様々なテーマの屏風絵を展示しています。

このコラムでは、展覧会をより楽しんでご覧いただくため、屏風についての基本的な知識と、展覧会に出品中の屏風絵についてご紹介します。

 

■屏風とは? ―形式・数え方・見かた―

屏風は、もともと風除けや視線をさえぎり、室内装飾として欠かせない調度品でした。その屏風に絵を描いたものを「屏風絵(びょうぶえ)」と呼びます。 

屏風の形式は、一般的には六枚の画面(「扇(せん)」と呼ぶ)をつなぎ合わせた「六曲屏風」が基本の形です。二枚のものを「二曲屏風」、四枚のものを「四曲屏風」、八枚のものを「八曲屏風」と呼びます。折り畳んで運べるため移動や保管にとても便利です。

数え方は、屏風一点を「一隻(いっせき)」(半双(はんそう)とも)といい、二隻で一組のときは「一双(いっそう)」。六曲一双屏風の場合、向かって右側の屏風を「右隻(うせき)」、左側の屏風を「左隻(させき)」といいます。

見かたとしては、右から左(右隻から左隻)へと見ていきます。屏風はジグザグに立てることにより立体的に見せる効果があり、遠近両方から楽しんで見ることもできます。基本的には屋内に飾るものなので、当時の照明(蝋燭など)の明かりのなかで見ることを想定してつくられています。

 

■屏風の歴史

屏風の歴史は古く、記録上では7世紀後半の天武天皇の頃に、朝鮮半島の新羅からの贈り物として届けられたことが始まりとされています。また、現存する最古の遺物としては、奈良時代の聖武天皇の遺愛品で、正倉院宝物として知られている「鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)」にまで遡ります。

以後、平安・鎌倉時代を通じて貴族やその周辺の人々の生活空間において、風や視線をさえぎったり、室内装飾などの調度品として用いられて、とても身近なものでした。屏風に絵が描かれるようになったのも平安時代頃からとされ、鑑賞絵画としての需要が高まった桃山・江戸時代には、墨の濃淡を用いた山水画、華やかな色彩の花鳥画や風俗画などが描かれるようになります。明治時代以降は、西洋文化の流入によって生活様式が変化し、日常的には用いられることがほとんどなくなりました。そして、展覧会などの作品発表の場ができたことで絵画の一形態として描かれ続け、現在に至っています。

 

■屏風絵の紹介 ―《四季農耕図屏風》と《洛中洛外図屏風》―

  

・《四季農耕図屏風》 狩野常信筆 江戸時代前期—中期  (公財)致道博物館蔵

四季農耕図とは、一年間の米作りを中心とした農作業の様子を描いたものです。農耕図は、中国・南宋時代の「耕織図」を起源とし、もとは君主が民の労苦を知り、善政を敷くための戒めとして描かれていました。日本へは室町時代に伝わり、狩野派を中心に描かれ、江戸時代にはおめでたい吉祥をあらわすものとして町人層にも広く受け入れられました。

本屏風の右隻には「稲籾浸し」から「田植え」までの春夏の作業が、左隻には「稲刈り」から「蔵入れ」までの秋の作業が描かれています。各モチーフの周囲に配された金雲によって絶妙な空間が生み出され、画面に高い格調を感じさせてくれます。人物、樹木、家屋なども丁寧な筆致で描かれており、常信の「農耕図」の作例の中でも代表作のひとつといえるものでしょう。

作者の狩野常信(1636~1713)は、江戸狩野派の祖・狩野探幽の弟・尚信の子で、江戸幕府の御用絵師である奥絵師四家のひとつ「木挽町狩野家」の2代目です。探幽以来の江戸狩野派の作風を受け継ぎ、江戸城や禁裏の障壁画制作に参加、宝永6年(1709)には狩野派では探幽以来の法印(画家として最高位)に叙されました。

 

 

・《洛中洛外図屏風》 江戸時代後期 旧青山本邸蔵

洛中洛外図屏風は、室町時代から江戸時代にかけて、京都の市中(洛中)と郊外(洛外)の名所や四季の景観、そこに生活する人びとの風俗を描き込んだものです。当時の京都の建物や風俗を知るための貴重な資料ともいえます。現存する江戸時代の洛中洛外図屏風は100点以上あるとされています。

本屏風の構図は、江戸時代を通じて描かれたもので、左隻は寛永3年(1626)に挙行された後水尾天皇の二条城行幸の様子を中心にしており、右隻は祇園祭り(祇園会)の山鉾巡行を中心にして、町屋、寺社、人物などが描かれています。特に目を引くのが人物の多さで、両隻に描かれた人物は約3,600人です。

2017.09.25


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