芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

公益財団法人 本間美術館Hommna Museum of Art

コラム

夏の絵画の代表、瀧を描いた作品

学芸員:阿部 誠司

今年は梅雨明けが遅く、本格的な暑さはもう少し先になりそうですが、
今回は開催中の展覧会「夏の絵画と工芸展」から、夏を代表する絵画と言ってもよい、瀧を描いた作品をご紹介します。

 

 

  田能村直入 雨後観瀑図  館蔵

この作品は扇面画と言って、扇子に描いた作品です。
扇子は小品であることから、昔から比較的購入しやすい絵身近な絵画でした。
涼とともに、季節感のある絵柄を手にして楽しんだのでしょう。

 

この作品のタイトルにある「瀑」とは「瀑布」のことで、白い布を垂らしたように直下する瀧を意味します。
画面右下のあずまやには、瀧を眺める人物が描かれていますね。
雨あがりで水量が増して、瀧にも勢いが感じられます。
縦に長い画面で描かれる事の多い山水画ですが、直入は横に長い画面をうまく使い奥行のある抒情的な風景に仕上げています。

作者の直入は、幕末から明治の文人画家。田能村竹田に学び、竹田の画法を守って田能村姓を継ぎました。
富岡鉄斎と日本画協会を創立するなど、明治の南画の振興に尽力しました。

 

 

  菅原梅里 瀧之図  館蔵

画面の上から下に向かって真っすぐに落ちる水の流れは、まさに「瀑布」と言える作品です。
瀧のある風景というよりは、瀧そのものを象徴的に描いており、神聖さを感じますね。

作者の梅里は、酒田を代表する日本画家の一人で、鉄道員を退職してから画家として活躍しました。
山形の日本画家・下條桂谷に師事して、山水を中心に多くの水墨画を描いています。

 

 

  加藤雪窓 瀑布図屏風  個人蔵

この作品は、六曲一双の大画面に勢いよく流れる水のうねりが圧巻で、銀箔と水の組み合わせが涼しさを感じさせます。

 

右隻は、画面の三分の一を占める大瀑布が描かれ、岩や樹々を飲み込むように画面左へ流れていきます。

 

左隻は、右隻から流れてきた急流がいくぶん穏やかになって、海に注いでます。

 

よく観ると、浜辺に子どもたちが描かれています。
墨一色のように見えますが、松の葉には濃い緑色が使われいる事も分かります。
※浜辺が黄褐色に見えるのは、銀箔に畳の色が映ったものです。

作者の雪窓は、秋田出身で酒田に定住した日本画家。若かりし頃上京し、橋本雅邦に入門して腕を磨きました。
中央画壇での活躍が期待されましたが、雪窓は酒田へ戻ります。
酒田では旧家や旅館の襖絵などを描き、自身主催の画会を開くなどし、地域に親しまれました。

もう一度作品を観て下さい。海の波は高く、松も強風のためが斜めになっていますね。
伝統的な瀑布図の画題に、雪窓の人生の大半を過ごした日本海沿岸の風景が投影されているのかもしれません。

 

 

いかがでしたでしょうか。
夏に涼を求める代表的な絵画である瀧の図。伝統的な画題であり、瀧が多く存在する日本では身近なテーマだったのではないでしょうか。また、古くから信仰の対象でもあった瀧は、時には描く方も身構えるような存在だったかもしれませんね。
展覧会では、水の動きや水しぶき、音、風、湿度など、ご自身の経験からいろいろな事を想像して瀧に迫ってみると、作品をより楽しめると思います。

 

 

2020.07.18


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