公益財団法人 本間美術館は、「公益」の精神を今に伝え、近世の古美術から現代美術、別荘「清遠閣」の緻密な木造建築の美、「鶴舞園」、さらには北前船の残した湊町酒田の歴史まで楽しめる芸術・自然・歴史の融合した別天地。

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Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館

コラム

公益財団法人 本間美術館 [山形県 酒田市] > コラム > 2019年

本間美術館と棟方志功展

学芸員:須藤 崇

日本を代表する版画家・棟方志功(1903~1975)は、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)に憧れを抱いて画家を志し、板画(木版画を「板画」という字で表現)をはじめ、倭画(肉筆画)、油絵、書など幅広く手がけ、その大胆で自由奔放な作品は今なお多くの人々に愛されています。昭和30年(1955)のサンパウロ・ビエンナーレ、昭和31年(1956)のヴェネツィア・ビエンナーレでは日本人初の版画部門最高賞を受賞し、国外でも高い評価を受け、「世界のムナカタ」と呼ばれるようになりました。

その世界的にも知られた棟方志功が、本間美術館で生前中に5回展覧会(没後に1回開催し、あわせて6回開催。)を開催しているのを皆さまはご存知でしょうか?

今回のコラムでは、当館で開催された棟方志功の各展覧会についてご紹介します。

 

1.「棟方志功展」 昭和32年(1957)8月3日~8月18日

第1回目は、昭和32年に開催された「棟方志功展」です。この展覧会では、酒田市在住の個人コレクションより、板画と肉筆画を中心にご紹介しました。借用先のご所蔵者様と棟方氏は親交をもっており、文通をする間柄でした。

 

2.「棟方志功自選板画展」 昭和35年(1960)4月26日~5月3日

第2回目は、棟方氏が自選した板画を中心にご紹介した「棟方志功自選板画展」です。現在当館に収蔵されている《ボリサリノの女》(昭和35年/1960)も出品されています。

 

3.「棟方志功自薦展」 昭和46年(1971)6月14日~6月30日

第3回目は、棟方氏の所蔵作品から自薦した板画と倭画を中心にご紹介した「棟方志功自薦展」です。元京都国立近代美術館館長で美術評論家の今泉篤男氏のご協力で開催されました。図録は棟方氏自身がデザインを担当し、その表紙原稿や自筆の挨拶文原稿も当館に収蔵されています。

 

 

4.「棟方志功 油絵展」 昭和49年(1974)5月10日~5月30日

第4回目は、棟方の油絵作品50点をご紹介した「棟方志功 油絵展」です。前回展同様に図録は棟方氏自身がデザインを担当し、図録に使用された表紙原稿、目録挿絵原稿、自筆文の「わだばゴッホになる」、裏表紙原稿の自画像も当館に収蔵されています。

  

 

5.「棟方志功 奥の細道板画展―安川電機―」 昭和51年(1976)4月6日~22日

第5回目は、棟方氏とゆかりの深い株式会社安川電機のご協力のもと、松尾芭蕉の『奥の細道』を題材とした板画26点をご紹介した「棟方志功 奥の細道板画展―安川電機―」です。期間中には、安川電機制作の映画「彫る棟方志功の世界」の映写会を行っています。

 

6.「棟方志功の世界」 平成6年(1994)4月13日~5月12日

第6回目は、青森市の棟方志功記念館のご協力のもと開催した「棟方志功の世界」展です。初期から中期にかけての代表作《善知鳥版画巻》(昭和13年/1938)や《女人観世音板画巻》(昭和24年/1949)をご紹介しました。

上記のように、当館で6回もの展覧会が開催できたのは、棟方氏をはじめ、当時の館長だった本間祐介や学芸員の佐藤七郎、そして関係者の皆さまのご尽力によるものです。

このコラムでもご紹介した棟方自身がデザインした展覧会図録の資料は、現在開催中の企画展「逸品!珍品?勢ぞろい」(5/28まで)で展示していますので、ぜひご覧ください

2019.05.06