Homma Museum of Art芸術・自然・歴史の融合/公益財団法人 本間美術館
コラム
庄内の古典人形と本間美術館の雛祭
学芸員:阿部 誠司
■「京人形」は北前船文化の象徴
江戸時代の酒田は、北前船の西廻り航路によって日本海側の交易を一手に握り「西の堺、東の酒田」と言われるほど商業都市として栄えていました。
酒田港からは、最上川水運によって運ばれてきた内陸地方の紅花や大量の米を積んだ船が、上方や江戸に向かいました。そして帰りには、様々な物資とともに京都・大阪・江戸の雅な文物がもたらされています。
今日、庄内地方でみられる雛人形に代表される「京人形」の多くは、こうした航路により豪商などに伝わったものと考えられます。北前船によって酒田より入った人形は、最上川をさかのぼり内陸地方にも伝えられました。
■本間美術館で観ることができる古典人形
本間美術館に収蔵する古典人形の主軸となっているのが、鶴岡市の実業家・斎藤昌二氏寄贈の「白巽文庫コレクション」です。
斎藤氏は書画など古美術にも造詣が深く、自身のコレクションを白巽文庫に愛蔵していました。その白巽文庫から、昭和39年に内裏雛・御所人形・衣装人形など約70点、200体の古典人形をご寄贈いただいています。
斎藤氏のコレクションは、どの分野でも一つひとつ系統を追い、学術的な体系を整えて蒐集されています。古典人形においても時代による変遷や系統を表す内裏雛は貴重で、御所人形や衣装人形においても特色ある内容を誇ります。
この他にも、当館を代表する内裏雛となっている高さ約50㎝の享保雛(酒田の眼科医・佐藤清二氏寄贈)に、酒田三十六人衆の一人、豪商・白崎家や、庄内藩の御用商人・風間家に伝わった座敷いっぱいの大きな壇飾りのなど、庄内一帯の旧家からご寄贈いただいた貴重な古典人形をご紹介しています。
なお、酒田の豪商・本間家に伝わる古典人形は本間家旧本邸にて展示しています。そちらへも足をお運び下さい。
■なぜ、本間美術館に古典人形が多く集まったのか
今から68年前の昭和23年3月、戦後の復興のシンボルとして、清遠閣を会場に華やかな「雛人形展」が開催されました。この時、本間家だけではなく地元旧家のご協力で雛人形をお借りし、開催が実現しています。
これを機に、毎年雛祭の時期は地域と共になって雛人形展を開催しており、その折々に雛人形や古典人形をご寄贈いただくことで、全国に誇る充実したコレクションを形成しています。本間美術館に展示された古典人形をみれば、当時の酒田がいかに繁栄していたが感じられることでしょう。
2016.02.26
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