コラム

本間美術館でみる旧家に伝来した雛壇飾り
学芸員:阿部 誠司
国指定名勝庭園「鶴舞円」内にある「清遠閣」では、庄内地域の旧家に伝来した雛壇飾りを展示しています。
酒田の中西家に伝来した雛壇飾りは、品格と美しさを兼ね備えた古今雛が特徴です。
人形の大きさや作風が内裏雛・三人官女・五人囃子とそれぞれ異なるのは、この壇飾りが初めから一セットだった訳ではなく、長い家の歴史の中で子供が生まれたりした折々に買い足していったことを表しています。
鶴岡の豪商・風間家に伝来した雛壇飾りは、江戸製の古今雛と京都製の古今雛を見ることができます。
江戸製と京都製では人形の表情が大きく異なります。江戸製は玉眼やまぶた・口元の表現など写実を重視ししているのに対し、京都製では一時代前の引き目・鉤鼻を継承した古風で品のある顔をしています。
古今雛は人形の産地が京都から江戸に移った頃の人形です。江戸風が一般的になる中で、京都では伝統を継承した人形をつくり続けていたんですね。
また、壇飾りと壇に上がるような一対の小さな傘福が一体となったつくりもとても珍しいものです。
酒田の豪商・白崎家に伝来した雛壇飾りは、最上段に紫宸殿をかまえ、天皇・皇后を表す古今雛を飾ります。
紫宸殿の周りでは3月3日の宮中行事「闘鶏」が行われているのも特徴です。
人形の数は100体を超え、江戸後期から大正時代まで人形やお道具が買い足され、この八壇飾りになったのは大正期になってからのようです。
華やかで精巧な雛道具の数々も見どころですね。
美術展覧会場に展示する学術的に貴重な古典人形も素晴らしいですが、こうした旧家に伝来した雛壇飾りも見応えがあります。まさに北前船で栄えた庄内を表す文化だと思います。
2016.03.10
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